血糖値が高めの人こそ「朝食が大事」
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血糖値が高めの人こそ「朝食が大事」の医学的理由
インスリン分泌を促し糖を調整する食事のコツ
ノーベル賞で注目を集めた「体内時計」の研究が進み、「時間」を考慮した栄養学の必要性が提唱されるようになりました。「何を食べるのが健康によいか」ではなく、「いつ食べるのが健康によいか」が注目され調べられるようになったのです。体内時計のリズムに合った食べ方こそ、健康の原点であると考えられ、「時間栄養学」と呼ばれています。
本稿では、東京女子医科大学名誉教授の大塚邦明医師が上梓した『大切なのは「いつ食べるか」でした。』より、「時間栄養学」とはどのようなものか、また「体内時計」に合った生活の工夫をご紹介します。
ここ十数年間の厚生労働省の報告を見ると、日本人の「総カロリー摂取量」が低下しています。ところがその一方で、糖尿病は増えています。今では40歳以上の国民の約3割が糖尿病かその予備軍です。
◎「体内時計」乱れと糖尿病の関係
糖尿病予防・治療の重要なポイントは、“食べすぎない=適切なカロリーを摂取する”ことであるのに、なぜこのような矛盾した現象が起きるのでしょうか。
それは、不規則な食生活で「体内時計」の働きが乱れてしまい、血糖値を下げるインスリンの効果が弱くなっているためと考えられます。
マウスからすい臓の子時計にある時計遺伝子を“ノックアウト”(遺伝子操作によって実験動物から完全に除去すること)すると、インスリンが出なくなって糖尿病になります。人の場合も、体内時計の時計遺伝子に異常がある人は、糖尿病になりやすいことがわかっています。
体内時計の働きが弱くなるとすい臓の子時計のリズムも乱れてしまい、糖尿病になりやすいというわけです。
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●朝食をしっかり食べると血糖値が下がる
朝、昼、夜と3食同じ食事内容で、それぞれ食後の血糖値を測ってみると、朝食後の血糖値が最も低く、夕食後の血糖値が最も高いことがわかりました。
それには、2つの理由があります。
まず1つめは、「インスリンの効果に差」があるからです。食事とともに分泌されるインスリンの効果は、体内時計によってコントロールされていて、血糖を調整する働きは朝食後が最大です。朝食後に上昇した血糖値は緩やかに下がっていきます。夕食後はその効果が弱く、血糖は高くなってしまうのです。また、朝食後のインスリンは効力が大きいだけではなく、効果の「持続時間」も長いのが特徴です。昼食後や夕食後の血糖の上昇までも低く抑えてくれるのです。朝食は絶対に欠かせません。
2つめは、エネルギーの使い方に差があるからです。朝食にともなう熱産生(DIT:消化に内臓が活動することによって消費するエネルギー)が、夕食に比べて2倍も大きいために、朝食後の血糖値は低くなります。
◎カロリーを摂るなら朝がいい理由
朝に糖の吸収がさかんであるのなら、朝食を高カロリーにした場合と、夕食を高カロリーにした場合で、1日当たりの血糖値の推移はどのように違ってくるのでしょう。
イスラエルのヤクボヴィッツ教授は、1日1500kcalの食事を、
①朝食700kcal/昼食600kcal/夕食200kcal
②朝食200kcal/昼食600kcal/夕食700kcal
とで比較してみました。
予期したとおり、朝食を高カロリーにすることで、2型糖尿病(主に生活習慣の乱れから、すい臓のインスリンの分泌が低下し、血糖値が高い状態が続く)患者の1日全体の高血糖を減少させることができました。
朝食を高カロリーにして夕食を低カロリーにすると、高血糖や糖尿病、肥満が改善されていくのです。
●朝に食物繊維をとると、 昼が“チャンスタイム”に変わる
「セカンドミール効果」とは、カナダのトロント大学のジェンキンス博士が1982年に提唱した概念です。
ジェンキンス博士は、1日のうちの最初にとる食事(ファーストミール)で食物繊維を多くとると、食後の高血糖が抑えられるだけでなく、その数時間後にとる食事(セカンドミール)でも血糖の上昇を抑えられる効果があることを観察し、「セカンドミール効果」と呼びました。
実は、朝食(すなわちファーストミール)のときに食物繊維を多めにとっておけば、セカンドミール効果(すなわち、血糖値の増加を抑える効果)は、昼食(セカンドミール)時だけではなく夕食(サードミール)時にも観察されます。
十分なセカンドミール効果を得るために、朝食のときに意識して食物繊維を多めにとっておくことが重要です。
◎「セカンドミール効果」の仕組み
セカンドミール効果が得られる理由は2つあります。
1つは、食物繊維の粘物質が他の食べ物と絡み合い、胃や小腸の中を移動するスピードが遅くなって糖の吸収速度が穏やかになるからです。
もう1つは、「腸内フローラ」が食物繊維を「短鎖脂肪酸」に消化し、腸内環境を整えてくれるからです。腸内フローラでつくられた短鎖脂肪酸は、「グルカゴン様ペプチド-1」(GLP-1)という消化管ホルモンを分泌し、昼食後に血糖が上がる前に先回りしてインスリンを分泌させ、昼食後の血糖上昇を抑えます。
実は、セカンドミール効果を利用すれば、翌日の朝食後の高血糖を抑えることも可能のようです。
1988年、ジェンキンス博士らは夕食に十分量の低GI食品(血糖値を上げにくい食品)をとっておくと、翌日の朝食後の血糖値も抑えられることを報告しています。
●罪悪感なし! 賢いおやつのとり方
2023年、柴田重信教授らは、間食のセカンドミール効果を利用すれば、夕食後の血糖値上昇を抑えられることを発見しています。
12時の昼食と19時の夕食の間、15時か17時におやつを食べると、夕食後の血糖値の上昇が効果的に抑えられました。
どれくらいのおやつをいつとるのが健康によいのか、間食を上手にとる工夫は、期待の持てる食事法です。
ナッツ類は低GI食品ですので小腹がすいたときのおやつに取り入れるといいでしょう。
ちなみに、宇宙飛行士が国際宇宙ステーションに滞在するときの食事は、朝食、昼食、夕食とスナックの3.5食だそうです。食事のリズムとして、1日3.5食に設定されているのが興味深いですね。
時間栄養学の知恵を利用すれば、いっそう理にかなった食事法になることでしょう。(以上東洋経済オンライン記事抜粋)
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