「命に直結する血管の老い【前編】」
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毛細血管は年齢とともに4割失われる「近年、心臓の収縮機能自体には問題がないのに、心不全になる人が増えています。これには血管の老化が影響していると考えています」(医療法人宝持会池田病院院長・京都府立医科大学特任教授の池田宏二氏)
体全体に張り巡らされている血管は、成人一人分をつなぎ合わせると実に地球2周半にも及ぶという。脳から手足の先まで酸素と栄養を休まず届け続ける、この巨大なネットワークが、近年の研究で「老化の最前線」として注目されている。その一つが、'25年に学術誌『Scientific Reports』に発表されたアメリカの大規模調査だ。20歳以上の成人およそ4万8000人を最長20年近く追跡し、血管の硬さと死亡リスクの関係を調べた。その結果、血管が硬い人は軟らかい人に比べて死亡リスクが2・67倍、心血管疾患による死亡リスクは2・75倍にも達していた。さらに数十項目の健康指標を比較したところ、コレステロール値や血糖値よりも、血管の硬さのほうが死亡リスクと強い相関があったという。
血管の「数」についても、衝撃的な研究がある。人も動物も、年齢を重ねるにつれて毛細血管の数は減っていき、加齢とともに最大で4割近くも減ってしまうという。ところが'21年、米科学誌『Science』に発表されたマウス実験では、遺伝子操作によって加齢に伴う血管の減少を食い止めたところ、寿命が約4~5割も延びたのだ。人に当てはめると、30~40年も寿命が延びた計算になる。
いまや血管と全身の老化は切り離して語ることはできないということが、常識になりつつある。『血管の専門医が30年間欠かさないすごい習慣』などの著書がある、池谷医院院長の池谷敏郎氏が解説する。
古くから「人は血管とともに老いる」と言われてきましたが、血管が老いることで体全体の老化が促進されるという因果関係まで最新研究で次々と明らかになってきた。血管と老化の関係を正しく理解し、血管をケアしてあげることが長寿の秘訣なのです」
「老いた血管」の症状
では「血管が老いる」とはどのような状態を指すのかから見ていこう。それは大きく2つの変化が組み合わさって起こる。血管の壁が厚く硬くなる「動脈硬化」と、血管の成分の変化だ。
東都クリニック循環器内科医師の桑島巌氏が語る。
「本来、血管の壁はしなやかで、内側も滑らかです。圧がかかれば柔軟に広がり、緩めばもとに戻ります。ところが年齢を重ね、生活習慣などによって血管年齢が老いると、血管の内側にコレステロールなどの脂の汚れがこびりつき、内腔が狭くなっていきます。これが「動脈硬化」と呼ばれる現象です。
それだけでなく、血管の壁を作っている線維そのものも変化していきます。若いうちは弾力性に富んだ『弾性線維』が豊富なのですが、年齢を重ねるにつれて、伸び縮みしにくい『膠原線維』へと置き換わっていく。動脈硬化と、この壁の成分変化が組み合わさることで、血管はしなやかさを失っていくのです。これが脳梗塞や心筋梗塞といった「血管の事故」につながっていきます」
そもそも血管は単に血液を送るための管ではない。すべての血管の内側を覆う血管内皮細胞は、さまざまな物質を介して、あらゆる臓器の細胞とコミュニケーションを取り続けている。つまり、血管は各臓器の状態を正常に保つための連絡網でもあるのだ。
だからこそ、血管の老化が引き起こすのは、心疾患に限らない。心臓以外の内臓を含め、体全体の老化に悪影響を及ぼすのだ。「血管内皮細胞が老化すると、有害な物質をまき散らすようになるんです。
これは『SASP(細胞老化関連分泌形質)』と呼ばれる現象で、周囲の細胞に慢性的な炎症を引き起こす、炎症性サイトカインやケモカインなどが血管で作られてしまいます。いわば『老害』となった血管による炎症が、全身の臓器の機能異常を引き起こしてしまうのです」(前出の池田氏)
※【明日後編は】
研究で判明、血管が硬い人は見た目が「老ける」のも恐ろしいほど早くなる…いまから始めるべき劇的な改善法「週刊現代」2026年7月20日号より
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